大判例

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東京高等裁判所 昭和44年(行ケ)4号 判決

(争いのない事実)

一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本願各発明の要旨及び本件審決理由の要点が、いずれも、原告主張のとおりであることは、当事者間に争いのないところである。

(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 原告は、本件審決は、第二引用例に開示されている技術内容についての認定を誤り、ひいて本願特定発明との比較において判断を誤り、本願特定発明をもつて各引用例から容易にできるものであるとした点において判断を誤つたものである旨主張するが、この主張は、理由がないものといわざるをえない。すなわち、

1 原告は、第一引用例と第二引用例とは、フイルムの加熱温度を異にするから、第二引用例に開示されている技術を第一引用例に取入れることはできない旨主張するが、成立に争いのない甲第四号証(第一引用例)及び第五号証(第二引用例)によれば、第一引用例においては、熱可塑性合成樹脂製のシートの加熱は、加熱面が溶融状態になるまで行われ、二枚のシートは溶融状態において融着され、固定的に接着されていること及び第二引用例においては、ビニルシートのような熱成型性薄帯の加熱は、薄帯が軟化する程度に行われ、その状態においてこれに真空吸引による型付操作が施されることが認められるところ、第二引用例において、熱成型性薄帯の叙上軟化の程度については、格別の限定はないから、溶融状態に至るまでの軟化を含むものとみるを相当とし、したがつて、原告の右主張は、採用することができない。

2 原告は、第二引用例は、加熱されたフイルムを、継続して密接する担体によつて支持しながら塑造段階へ供給するものではないから、本件審決認定の相違点(1)を補うものではない旨主張するが、前顕甲第五号証(第二引用例)には、ビニルシートのような熱成型性薄帯を型付廻転子の周囲に沿つて回転させ、真空吸引により連続的に種々の模様型付を行う成型装置について記載されているところ、この装置は、第一図に示される送出、加熱、型付、冷却、巻取の各装置よりなり、薄帯すなわちフイルムは、加熱装置の電熱素子により加熱され、案内転子により移送されて型付装置に供給されていることが認められる。したがつて、加熱されたフイルムは、継続して密接する担体すなわち案内転子により塑造段階(型付装置)に供給されているとみるのが相当である。原告は、第二引用例に示されている製造方法は、加熱装置と型付装置との間で加熱されたフイルムが、かなりの長さにわたつて宙を走つているから、本願特定発明の、継続して密接する担体によつて支持しながら塑造段階へ供給することにはならない旨主張する。しかしながら、成立に争いのない甲第一号証(本願の特許公報)によれば、本願特定発明の特許請求の範囲には、「フイルムが次の塑造段階に極めて近い位置に至るまでの間、該フイルムに継続して密接する担体によつて該フイルムを次の塑造段階へ供給する」とのみ記載され、その「発明の詳細な説明」の欄にも、右の要件に関し、格別の説明はなく、図面第三図に図示されたところによれば、担体、すなわち回転子49及び移動ベルト50と塑造回転子10とが密接していないで、ある程度の間隔を保ち、加熱されたフイルムが、この間を、担体にも塑造回転子にも接しないで移送されていることを認めることができ(原告は、第三図において、フイルムが、回転子49と塑造回転子10との間で宙吊りされているように示されているのは誤記である旨主張するが、誤記と認めるに足る証拠はない。)、叙上認定の事実に、前掲甲第一号証(本願特許公報)中の第一図、第二図、第四図及び第五図に、担体と塑造回転子とが密接して図示されていることを合わせ考えれば、本願特定発明の特許請求の範囲の欄に、「塑造段階に極めて近い位置に到る間」ということは、その文言どおり、前示のような担体と塑造段階とがある程度間隔を保つた状態をも指称するものと解するのが相当である。したがつて、前顕甲第五号証によると、第二引用例第一図に示された装置において、担体と塑造段階との間にある程度の間隔があるけれども、この状態をもつて、第二引用例には、加熱されたフイルムを密接する担体によつて支持しながら供給するという技術思想が開示されていないと断ずることはできないから、原告のこの点の主張は、理由がないものといわざるをえない。なお、原告は、本願特定発明において、「加熱された」とは、溶着可能温度に加熱されていることを指称し、この点第二引用例の場合と異なることを理由に、第二引用例の場合にはフイルムを密接する担体により支持しながら供給するという技術思想が開示されていない旨主張するが、第二引用例の場合においても、熱成型性薄帯は溶融状態(溶着可能程度)に加熱、軟化されることは、前認定のとおりであるから、原告の右主張は理由がない。

3 原告は、本願特定発明は、各引用例の期待しえないすぐれた効果を奏するものであり、したがつて、各引用例から極めて容易に推考できるものではない旨主張するが、生産速度は、前顕甲第一号証(本願の特許公報)によれば、本願特定発明の構成要件ではないところの、フイルムの厚さと装置の大きさのいかんによるものであることが認められるので、これをもつて、本願特定発明の直接の効果とはいい難いし、その他の原告主張の効果は、いずれも各引用例の構成に徴し、各引用例から生ずる効果が付加された程度のものにすぎないとみるを相当とし、これを左右するに足る証拠はないから、原告の前記主張もとうてい採用しうべき限りではない。

(むすび)

三 叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却する。

一 熱可塑性材料の第一のフイルムを、その溶融点附近に加熱する段階と、加熱された第一のフイルムが次の塑造段階に極めて近い位置に至るまでの間該フイルムに継続して密接する担体によつて該フイルムを次の塑造段階へ供給する段階と、加熱された第一のフイルムにその一方の面から盛りあがり,かつ、間隔をおいて配置された複数個のエンボス部分を形成する塑造段階と、熱可塑性材料の第二のフイルムの少なくとも一方の面をその溶融点附近に加熱する段階と、溶融点に近い温度に維持されている第一のフイルムを支持する塑造段階へ向けて担体上に支持された第二のフイルムを供給し、かつ、第一のフイルムの非エンボス部分と第二のフイルムの加熱面とが相互に溶着するごとく第二のフイルムを支持する担体の一部分によつて両フイルムを上記塑造段階へ向けて挟圧する段階と、両フイルムを上記塑造段階上に支持したまゝ冷却する段階とよりなる緩衝材料の製造方法。

二 熱可塑性材料の第一のフイルムをその溶融点附近に加熱する段階と、加熱された第一のフイルムが次の塑造段階に極めて近い位置に至るまでの間該フイルムに継続して密接する担体によつて該フイルムを次の塑造段階へ供給する段階と、真空排気手段へ連結された複数の凹みが表面に形成されている雌型を使用し上記の加熱された第一のフイルムを該雌型表面へ吸着して塑造を行なう段階と熱可塑性材料の第二のフイルムの少なくとも一方の面をその溶融点附近に加熱する段階と、溶融点に近い温度を維持している第一のフイルムを吸着する上記雌型へ向けて担体上に支持された第二のフイルムを供給し、かつ、第一のフイルムの上記凹み外にある部分と第二のフイルムの加熱面とが相互に密着するごとく第二のフイルムを支持する担体の一部分によつて両フイルムを上記雌型へ向けて挟圧する段階と、両フイルムを上記雌型上に支持したまゝ冷却する段階とよりなる緩衝材料の製造方法。

三 熱可塑性材料の第一のフイルムをその溶融点附近に加熱する段階と、加熱された第一のフイルムが次の塑造段階に極めて近い位置に到るまでの間該フイルムに継続して密接する担体によつて該フイルムを次の塑造段階へ供給する段階と、真空排気手段へ連結された複数の凹みが表面に形成されている雌型円筒を使用し上記の加熱された第一のフイルムを該雌型円筒表面へ吸着して塑造を行なう段階と熱可塑性材料の第二のフイルムの少なくとも一方の面をその溶融点附近に加熱する段階と、溶融点に近い温度を維持している第一のフイルムを吸着する上記雌型へ向けて担体上に支持された第二のフイルムを供給し、かつ、第一のフイルムの上記凹み外にある部分と第二のフイルムの加熱面とが相互に密着するごとく第二のフイルムを支持する担体の一部分によつて両フイルムを上記雌型円筒へ向けて挟圧する段階と、両フイルムを上記雌型円筒上に支持したまゝ冷却する段階とよりなる緩衝材料の製造方法。

四 熱可塑性材料の第一のフイルムが次の塑造段階に極めて近い位置へ到るまでの間該フイルムに継続して密接する担体によつてその溶融点附近に加熱された該フイルムを次の塑造段階へ供給する段階と、加熱された第一のフイルムにその一方の面から盛り上がり、かつ、間隔をおいて配置された複数個のエンボス部分を形成する塑造段階と、熱可塑性材料の第二のフイルムが上記塑造段階へ導入されるまでの間該第二のフイルムに継続して密接する担体によつて、その溶融点附近に加熱された第二のフイルムを上記塑造段階においてすでに支持されている第一のフイルム上に供給し、かつ、第一のフイルムの非エンボス部分と第二のフイルムとが溶着するごとく第二のフイルムを支持する担体と上記塑造段階との間に両フイルムを挟圧する段階と、両フイルムを上記塑造段階上に支持したまゝ冷却する段階とを有し、上記二組のフイルムの供給段階のうちの少なくとも一組における担体はこれに接するフイルムを加熱するために少くともその一部が高温に維持されていることを特徴とする緩衝材料の製造方法。

五 熱可塑性材料の第一のフイルムが次の製造段階に極めて近い位置へ到るまでの間該フイルムに継続して密接する担体によつてその溶融点附近に加熱された該フイルムを次の塑造段階へ供給する段階と、加熱された第一のフイルムにその一方の面から盛りあがり、かつ、間隔をおいて配置された複数個のエンボス部分を形成する塑造段階と、熱可塑性材料の第二のフイルムが上記塑造段階へ導入されるまでの間該第二のフイルムに継続して密接する担体によつて、その溶融点附近に加熱された第二のフイルムを上記塑造段階においてすでに支持されている第一のフイルム上に供給し、かつ、第一のフイルムの非エンボス部分と第二のフイルムとが溶着するごとく第二のフイルムを支持する担体と上記塑造段階との間に両フイルムを挟圧する段階と、両フイルムを上記塑造段階上に支持したまゝ冷却する段階とを有し、上記二組のフイルム供給段階のうちの少なくとも一組は互に接触する複数個のローラーにより担体が形成され、これらローラーの少なくとも一個はこれに接するフイルムを加熱するために高温に維持されていることを特徴とする緩衝材料の製造方法。

六 熱可塑性材料の第一のフイルムが次の塑造段階に極めて近い位置へ到るまでの間該フイルムに継続して密接する担体によつてその溶融点附近に加熱された該フイルムを次の塑造段階へ供給する段階と、加熱された第一のフイルムにその一方の面から盛りあがり、かつ、間隔をおいて配置された複数個のエンボス部分を形成する塑造段階と、熱可塑性材料の第二のフイルムが上記塑造段階へ導入されるまでの間該第二のフイルムに継続して密接する担体によつて、その溶融点附近に加熱された第二のフイルムを上記塑造段階においてすでに支持されている第一のフイルム上に供給し、かつ、第一のフイルムの非エンボス部分と第二のフイルムとが溶着するごとく第二のフイルムを支持する担体と上記塑造段階との間に両フイルムを挟圧する段階と、両フイルムを上記塑造段階上に支持したまま冷却する段階とを有し、上記第一もしくは第二のフイルムの少なくとも一方は押し出し装置により造出され、該造出フイルムを上記塑造段階へ供給する段階において該フイルムを支持する担体は該フイルムの温度をその溶融点まで降下させるために冷却されていることを特徴とする緩衝材料の製造方法。

七 熱可塑性材料の第一のフイルムが次の塑造段階に極めて近い位置へ到るまでの間該フイルムに継続して密接する担体によつてその溶融点附近に加熱された該フイルムを次の塑造段階へ供給する段階と、加熱された第一のフイルムにその一方の面から盛りあがり、かつ、間隔をおいて配置された複数個のエンボス部分を形成する塑造段階と、熱可塑性材料の第二のフイルムが上記塑造段階へ導入されるまでの間該第二のフイルムに継続して密接する担体によつて、その溶融点附近に加熱された第二のフイルムを上記塑造段階においてすでに支持されている第一のフイルム上に供給し、かつ、第一のフイルムの非エンボス部分と第二のフイルムとが溶着するごとく第二のフイルムを支持する担体と上記塑造段階との間に両フイルムを挟圧する段階と、両フイルムを上記塑造段階上に支持したまま冷却する段階とを有し、上記第一もしくは第二のフイルムの少なくとも一方は押し出し装置により造出され、該造出フイルムを上記塑造段階へ供給する段階において該フイルムを支持する担体はローラーとその周面の一部に対向するバンドとにより構成され、該バンドはこれと上記ローラーとの間に担持される上記造出フイルムの温度をその溶融点まで降下させるために冷却されていることを特徴とする緩衝材料の製造方法。

八 熱可塑性材料の第一のフイルムをその溶融点附近に加熱する段階と、加熱された第一のフイルムが次の塑造段階に極めて近い位置に到るまでの間該フイルムに継続して密接する担体によつて該フイルムを次の塑造段階へ供給する段階と、加熱された第一のフイルムにその一方の面から盛りあがり、かつ、間隔をおいて配置された複数個のエンボス部分を形成する塑造段階と、該塑造段階に支持されている第一のフイルムをその溶融点附近に再加熱する段階と、熱可塑性材料の第二のフイルムの少なくとも一方の面をその溶融点附近に加熱する段階と、溶融点に近い温度に維持されている第一のフイルムを支持する塑造段階へ向けて担体上に支持された第二のフイルムを供給し、かつ、第一のフイルムの非エンボス部分と第二のフイルムの加熱面とが相互に溶着するごとく第二のフイルムを支持する担体の一部分によつて両フイルムを上記塑造段階へ向けて挟圧する段階と、両フイルムを上記塑造段階上に支持したまゝ冷却する段階とよりなる緩衝材料の製造方法。

九 熱可塑性材料のフイルムをその溶融点附近に加熱する段階と、加熱された該フイルムを次の塑造段階に極めて近い位置へ到るまでの間該フイルムに継続して密接する担体によつて該フイルムを次の塑造段階へ供給する段階と、加熱された該フイルムにその一方の面から盛りあがり、かつ、間隔をおいて配置されたエンボス部分を形成する塑造段階とが、第一および第二のフイルムごとにそれぞれ設けられ、さらに溶融点附近の温度にある両フイルムの非エンボス部分が相互に溶着するごとく両フイルムを上記二組の塑造段階の間に挟圧する段階と、両フイルムを上記二組の塑造段階の少なくとも一方の上に保持したまゝ冷却する段階とを有する緩衝材料の製造方法。

十 熱可塑性材料の第一のフイルムをその溶融点附近に加熱する段階と、加熱された第一のフイルムが第一の塑造段階に極めて近い位置へ到るまでの間第一のフイルムに継続して密接する担体によつて第一のフイルムを第一の塑造段階へ供給する段階と、真空排気手段へ連結された複数の凹みが表面に形成されている雌型円筒を使用し上記加熱された第一のフイルムを該円筒表面へ吸着する第一の塑造段階と、熱可塑性材料の第二のフイルムをその溶融点附近に加熱する段階と、加熱された第二のフイルムが第二の塑造段階に極めて近い位置へ到るまでの間第二のフイルムに継続して密接する担体によつて第二のフイルムを第二の塑造段階へ供給する段階と、真空排気手段へ連結された複数の凹みが表面に形成されている雌型無端ベルトを使用し、上記加熱された第二のフイルムを該ベルト表面へ吸着する第二の塑造段階と、溶融点附近の温度にある両フイルムの非エンボス部分が相互に溶着するごとく両フイルムを上記円筒と上記無端ベルトとの間に挟圧する段階と、両フイルムを上記円筒と上記無端ベルトとの間に挟持したまゝ冷却する段階とを有する緩衝材料の製造方法。

十一 熱可塑性材料の第一のフイルムをその溶融点附近に加熱する段階と、加熱された第一のフイルムが次の塑造段階に極めて近い位置に到るまでの間該フイルムに継続して密接する担体によつて該フイルムを次の塑造段階へ供給する段階と、加熱された第一のフイルムにその一方の面から盛りあがり、かつ、間隔をおいて配置された複数個のエンボス部分を形成する塑造段階と、熱可塑性材料の第二のフイルムの少なくとも一方の面をその溶融点附近に加熱する段階と、溶融点に近い温度に維持されている第一のフイルムを支持する塑造段階へ向けて担体上に支持された第二のフイルムを供給しかつ第一のフイルムの非エンボス部分と第二のフイルムの加熱面とが相互に溶着するごとく第二のフイルムを支持する担体の一部分によつて両フイルムを上記塑造段階へ向けて挟圧する段階と、両フイルムを上記塑造段階上に支持したまゝ冷却する段階とよりなり、少なくとも上記塑造段階は高圧気体中において作動せしめられることを特徴とする緩衝材料の製造方法。

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